重慶

四川風シャブシャブ
 

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重慶は長江と嘉陵江の合流点にある、中国で4番目に大きな都市です。市街は両河のあいだにそびえたつ起伏に富んだ山々に形成され、別名を「山城(シャンチョン)」といいます。坂ばかりの市街なので中国名物の自転車洪水は見られません。裏通りでは、門口に座ってつくろい物をしている女性たちや、道の真中にイスとテーブルを置いて一家そろって食事をしていたりする光景がみられます
 
裏町の露店外のはずれに、四川風の寄せ鍋(毛肚火鍋<マオトウフオグオ>)を出すお店があります。テーブルの中央に穴があけられ、穴の下には燃えさかるコークスの入ったコンロが置かれ、赤褐色のスープが煮えたぎった大きな中華鍋がかけられていて、鍋の中は放射線状あるいは井桁状にトタン板を組んだものがはめ込まれています。ウシの胃袋(センマイ)、ブタのレバー、ブタの血を固めたもののスライス、タウナギの切り身、青ネギ、金針菜などを鍋に入れ、熱くなったらすかさずつまみあげ、ゴマ油、花椒をつぶしたもの、調味料を混ぜたタレに付けて食べます。四川風のシャブシャブといったところです。見知らぬ客たちが同じ鍋を囲んだときに具が混ざらないようにするために仕切り板が登場します。赤褐色のスープには丸のままのトウガラシが20?30本は入っていそうで、替えることなく毎日煮続けているというスープには肉、臓物、魚、野菜のクズが溶けてコロイド状になったものが溶け込み、鍋の縁にはスープのカスがこびりついて層をなしています。具をスープに沈ませて口にすると、飛び上るほど辛くて重厚な味がします。

 
民衆の昼食と大隊長の昼食
 
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ある中国人家庭で、民衆のごちそうとして出された昼食の献立は、塩蛋<イエンタン>(自家製アヒルの卵の塩漬け)、涼拌口篠<リャンバンコウテイアオ>(ブタのしたを八角とゆでて、油辣子ヨウラーツであえる)、豆花<トウファ>(おぼろ豆腐)、家常宮保鶏<チアチャンコンパオチー>(ピーナッツと鶏肉の炒め物)、墨魚排骨湯<モーユーバイグータン>(スルメをもどしたものと、骨つき豚肉のスープ)など、11品が並びました。いちばんのごちそうは豆花で、水につけた大豆を石臼で挽いて、布でこしてつくった呉汁に水を加えて大鍋で煮たてたものに凝固剤を入れて固めると湯の中に白い花が咲いたようになります。このつくりたてのやわらかな豆腐を湯といっしょにすくいとって器に入れ、醤油、ゴマ油、ネギのみじん切りや油辣子をつけて食べます。四川では正月やお客を招いた時のごちそうには豆花を欠かすことができず、つくりたてでないとおいしくできないので、自家製でなくてはなりません。また、豆瓣醤とならんで四川の家庭料理を特色づける味に油辣子があります。器に一合の粉トウガラシと一合のナタネ油、杯一杯ぶんの花椒、醤油大さじ一杯を入れ、箸でかき回したらできあがりです。

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郊外で営まれる歌楽山人民公社金剛生産大隊は、重慶市に供給する野菜作りを中心とした農業をおこなっています。大隊長の家には台所ばかりでなく、ベッドの下にもカメが置かれていて、なかには自家製の豆瓣醤や漬物がはいっています。漬物は四川名物の泡菜<パオツアイ>と搾菜<ザーツアイ>です。泡菜は調味した塩水に野菜を入れてつくった漬物で、泡菜瓶<パオツアイビン>という特殊な形をしたカメでつくります。カメの口の外側に溝のついた張り出し部分があり、この溝に水を張ってから蓋を落とし込むことで、カメの内外の空気が遮断されて好気性の微生物が繁殖することがなくなる一方で発行の際に発生する気体は水をくぐって外へ出ていくというつくりになっています。用意された昼食は料理人を台所によんでの大ごちそうで、目玉は豆花<トウファ>と腊肉<ラーロウ>です。腊肉は豚肉の燻製です。塩と花椒の粉を煎り、豚肉の塊にまぶして20日ほどカメに貯蔵してから取り出して乾燥させ、柏の枝で燻製にします。切ってザラメをかけて食べると上等の生ハムに似た香りがしてとてもおいしく、2〜3年保存ができます。このほか、皮蛋<ピータン>、莧菜<シエンツアイ>(ヒユ)を炒めたもの、タウナギと二ラに豆瓣醤をあえた炒め物、ブタの腎臓と若いトウモロコシの穂先の炒め煮など全15種類の料理が並びました。塩、醤油、酢、食用油(ナタネ油)のほかは全てこの人民公社内で生産されたものでつくられています。食卓には油辣子や青椒泥<チンチアオニー>という辛みのあるピーマンをつぶして酢や塩、醤油を混ぜたペーストが置いてあります。料理はさほど辛くありませんが、四川の人はほとんどの料理にこれらのペーストをつけて辛みを楽しみます。
 
 
四川料理

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四川料理の際立った特徴はなんといっても辛さですが、その辛さには2種類あります。四川料理は麻辣<マーラー>であるというのはそのためです。辣はトウガラシの辛さ、麻は花椒の舌を麻痺させるような辛さをしめしています。ただ、四川の人が辛い料理ばかり食べているわけではありません。四川料理全体のなかでは辛みのある料理は少数派です。高級な宴席料理になると辛さを控えるのが普通で、重慶飯店の最高級の四川料理の中に辛い味の料理は多くありません。前菜は独龍奔江<ドウロンペンチアン>という大皿で、龍を中心に9種類の冷たい料理が並びますが辛い料理は1品だけです。つづく八大菜という大皿に盛られた8種のメインディッシュがありますが、辛い味の料理は麻婆豆腐<マーボートウフー>と塩煎鮮肉<イエンチエシエンロウ>というブタ肉の薄切りを燈籠椒<トンロンチアオ>(シシトウガラシの類)、塩、豆鼓、豆瓣醤で炒めた物の2種だけです。大菜はひとつ食べるごとに口直しと次の大菜への食欲増進を兼ねて小点心が出されます。大菜のコースが終わると、4種類のあっさりした小皿料理が飯のおかずとして出されます。最後の3種のデザートまで数えると、全部で32種類の料理を食べることになりますが、そのうちで辛みのきいた料理は5種類だけです。
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