麵の文化史

1987-1990.12

そば屋の小僧になりたい

「ボク、おおきくなったら、おそば屋さんの小僧になるんだ。」軍国主義はなやかなりし頃、陸軍大将や海軍元帥でもなく、そば屋の小僧になりたがった石毛少年のこの一言に、人類学者として麵文化研究にたずさわることになった原点が垣間見える。石毛直道が麵の研究を始めた当初、麵文化研究は、麵食の長い歴史をほこる中国の麵文化でさえ充分に研究がなされていたとは言い難い状況にあった。このような状況を打破する第一歩が、無類の麵好きによる世界規模での麵文化研究として踏みだされたのである。


石毛直道の麵文化研究と企業

石毛直道の麵文化研究は、『文化麵類学ことはじめ』(1991年)としてその成果がまとめられた。本書は、1987年の日清食品のプロジェクト「めんの系譜研究会」が契機となって誕生したものである。執筆に際しては、日清食品の提供で読売新聞全国版の1頁を全面使用した世界各地の麵食事情を紹介するという大規模な企画・「地球麵家族」のコーディネーター役に抜擢されたことで、中央アジア・バンコク・ペナン・イタリアへの調査旅行を行った。本書は後に、『麵の文化史』と改題して文庫化されている。また,フーディアム・コミュニケーション社(創刊当時は,日清食品株式会社広報室)が出版していた『Foodeumフーディアム』第三号以降(1988年~1992年)、「文化麵類学」という対談記事のホスト役を務めた。『Foodeum』での対談記事は、『文化麵類学・麵談』(1994年)として同社から刊行された。なお,『文化麵類学ことはじめ』には『麵談』の成果も盛り込まれている。

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