食生活を探検する

刊行年月1969年8月
著者名石毛直道
刊行者名(株)文藝春秋

食に関する最初の著作。アフリカのサバンナやトンガ王国,ニューギニア高地などでのフィールドワーク中に出会った現地の食材や食習慣を思わず情景が目に浮かぶような楽しいエピソードとともにつづったエッセイ集。
文化の相違というようなことは,感覚的にのべたり,歴史的に説明されるが,はっきりした形のうえで比較することがなかなかむずかしい。食事という行為は,世界じゅう普遍的な現象であって,しかも調査のやりやすいことがらである。そこで,文化の比較研究などには,もってこいの手段となり得る。料理人類学という分野を開拓してみてもよさそうだ(著者あとがきより)。

 

自選著作集での説明

31歳のときに刊行したわたしの最初の著書である。当時はわたしは京都大学人文科学研究所の助手で,給料が安く,また飲み助なので京都の安飲み屋の何軒かにツケがあった。30歳のとき結婚がきまり,借金の返済と結婚資金が必要になったため,売れる本を執筆するしかないと考えた。そこで思いついたのが,オセアニアやアフリカで体験した食事に関するエッセイを中心とした本をつくることであった。世界の辺境地域を訪ねて野外調査をおこなってきたわたしは食いしん坊でもあるので調査地での食事の記述がおおい。当時は食を題材に一般読者向けの本といえば文人の余技としての食味随想くらいしかなかったので,人びとに新鮮に影響をあたえたようでおおくのマスコミの書評にとりあげられた。この本のあとがきに,「わたしにとって料理をつくることは遊びにすぎない。たべるために生きている人間ではないのである」と述べている。当時は自分の本業は社会人類学や物質文化の研究をすることであり,食に関する事柄は遊びであると思っていた。のちに食文化研究を志すようになると,わたしは「食べるために生きている」人間に転向したのである。